素顔を見せないデルタ卿に貴婦人達の間では良からぬ噂が広まっていました。

デルタ卿は悪魔の子ではないのかと言うのです。
きっと仮面の中の顔は世にも醜く、おぞましい顔なのではないかと噂は絶えません。

貴婦人達はデルタ卿に寄ってたかって東の魔獣を倒して欲しいと願い出ました。
東の魔獣は森から一歩も出ないのですが、
自分の領域に入ってきた者を食べてしまうという気性の荒さがありました。
その魔獣を倒しに行った者は二度と帰って来ないのです。

デルタ卿を魔獣に倒してもらおうと貴婦人達を言いくるめたのはとある人物でした。





そんな陰の声など露知らず、デルタ卿は丁寧に貴婦人達の願いを受け、
愛馬ジョワイユと共に東へその身を投げ出しました。

東の森に辿り着いたデルタ卿はジョワイユを森の入り口の木に繋ぎ、
自分一人で森の中へ足を踏み入れて行きます。
ジョワイユは悲しそうに一声鳴きました。





森の奥深いところに大きな巨体が身体を丸めて眠っています。

魔獣は近付く足音に瞼を震わせて目を覚ましました。
魔獣はデルタ卿に向かってうなり声をあげます。





デルタ卿は震える足に自嘲して、剣を引き抜きます。
魔獣は炎を大きな口から吐き出しました。
デルタ卿は盾をかざして炎から身を守りながら、一歩一歩と魔獣に着実に近づきます。

炎が止み、デルタ卿が盾を退かせば、魔獣の牙が急速にデルタ卿に迫りました。






絵本『騎士デルタ』

三部作の第三話目。
見開き3&4ページ・5&6ページ・7&8ページ・9&10ページ。
左開きになります。


更新日2008/01/04

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